ごあいさつ

東日本大震災を経験した日本国、政治・経済の不安定は収まらず、世界不況と閉塞感に溢れた時世となっております。世情は正に混沌として穏やかならぬなかで、今こそ心の拠り所としての寺院の役割を痛切に感じております。

誰の人生に於いても迷いや悩みはつきもの、取捨選択、出処進退を相談したい時があることでしょう。公的な相談所も信頼する先師も良いでしょう、しかし、最高の相談所はその家のお墓とお仏壇の前だといわれます。心静かに仏様の名を称え、静座していると、きっと答えが見えて来ます。それは、ご先祖様がお答えくださるのです。

「人身受け難し、今すでに受く」という辞(ことば)があります。「人間に生まれることは極めて難しいが、私は今こうして人間として生を受けている」という意味です。地球上には、無数の生命が存在しています。ありとあらゆるそれらの生命の中で、他の動物でもなく、植物でもなく、人間として生まれたということは、正に不思議な因縁です。それは、仏様との縁を持つ、尊いご先祖様との因縁にほかなりません。

私たちはそうした人間となるべく選ばれた存在なのです。先ずはその仏恩に感謝し、ご先祖様を供養して一所懸命に生きねばなりません。この世に人間として生まれた深い意味と尊さに気付き、命のつながりを次の世代に大切に伝えていきましょう。

このような時代だからこそ、どうぞ心静かにお参りください。

お薬師様、お大師様が見守り、導いてくださいます。

田宮山薬師寺住職 市川成寛